February 10, 2011

viBirth Artist Interview♯022『Chouchou』

Chouchou_head

 

 オンライン上に存在する「セカンドライフ」という仮想世界で生まれ、そこを拠点として活動を続けているという音楽ユニット、Chouchou(シュシュ)。メンバーであるヴォーカル・julietと、作曲を手がけるarabesqueの2人が創り出す音楽は、昨年6月に開催された短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル」の上映作品に2作品が選ばれるなど高い評価を受けているにも関わらず、彼らはその素顔や音楽に纏わる以外の詳細なプロフィールを今までメディアで明かしたことがない。今回のインタビューでは、Chouchouのサウンドメイカーであるarabesque氏に様々な話しを伺う中で、摩訶不思議な世界観と魅力に溢れる彼らの音楽、謎のベールに包まれた実態を少しだけ覗いてみようと思う。

 

-まずChouchouを結成したきっかけを教えてください。

ヴォーカルのjulietと出会った頃、彼女はNYに、僕はまだヨーロッパに住んでいました。それから幾年か過ぎてから、セカンドライフの中で一緒に音楽を制作しようということになったんですが、彼女は音楽を制作した経験もなかったし、会うこと自体がまず難しかったので、現地で僕が指定する機材を用意してもらい、オンラインを通してデータのやり取りをして…って、そんな感じで始まり2007年にChouchouが結成されました。彼女も初めは触ったことのない機材に戸惑っていましたが、元々凝り性な性格らしく、しばらくしたら興味を持って彼女の方から色々と質問してくるようになりました(笑)。


-遠距離をもろともせず、オンラインのみで成立させたという音楽制作のスタイルは面白いですね。では、現在までセカンドライフでライブを行なっているのはなぜですか?

2007年にちょうどセカンドライフのサービスがスタートして、非常に興味を持ったと同時に大きな可能性を感じたので、ここでライブをやってみたいと思いました。最初は英語版のみだけで敷居が高かったんですが、英語圏に長年住んでいて英語が堪能なjulietのおかげでなんとかなりました。そもそも遠距離からスタートしている僕らはオンラインでのやりとりに慣れていたし、セカンドライフというプラットフォームの中で、僕らが築いてきた世界観を表現できるんじゃないかと思ったんです。現実世界で同じ規模のことをやるとしたら莫大な費用もかかってしまうし。


-では、今後もセカンドライフのみでライブ活動を続けていく予定ですか?

実はセカンドライフ自体の問題がいくつかあるんです。まずライブを視聴するにあたって、セカンドライフを見る人のマシンスペックに依存してしまうんです。つまりPCの性能によってちゃんと見られなかったり、映像や音がスムーズに楽しめなかったりという現象が起きてしまう可能性があるということ。さらにセカンドライフの中でライブを実現するには、SIMと呼ばれるスペース(土地)が必要なんですが、そこは人数制限があって、大人数のお客さん(オンライン上の)が来てしまうと不具合が起きてしまうんです。つまり土地を増やさないとライブをしても沢山のお客さんを招待するとことができないという。あとは時差の問題もありますね。海外と日本との大きな時差がある中で、少しでも世界中の多くの方に見て頂けるよう、ライブセットを分けたり中継地点を作ったり、あとはセカンドライフで見られない方のためにも、USTREAMでライブ中継をしたり、動画サイトにあったライブ映像をアップしたりしています。あくまで今の活動の機軸はセカンドライフですが、他のツールも使って広めていくということはしています。


-なるほど。セカンドライフでのライブ活動は思ったより簡単ではないようですね。
では次に、自身の音楽的なバックグラウンド、また作曲を始めた経緯などを教えてください。

僕は幼少よりクラシックピアノをやっていたんですが、どうしてもクラシック音楽だけでは満足出来ず(理解しきれなかったのもありますが。笑)、ジャンルにとらわれずにそれ以外の音楽も色々聴いて行くようになりました。J-POPからロック、テクノまで幅広い興味を持って色々。作曲を始めたきっかけは、中学のころに機材を使って音楽を作っていた友人ですね。僕が作った自作曲の楽譜を渡して、彼に打ち込んでもらっていました。それで『すごいなー。自分もやってみたい』って思うようになって、そこから機材を購入して現在に至る感じです。高校のときには、打ち込み系中心のバンドをやったりもしました。


-そういった事柄が今のChouchouの独特なサウンドを形成する背景となったのですね。
では、昨年の12月11日にリリースされた最新アルバム「VINCULUM」について聞かせてください。‘絆’という意味を持つタイトルの、このアルバムへ込めた想いとは、どのようなものだったのでしょうか?

私事なんですが、2年前に僕の父が他界してしまったんです。それでその前までの1年間くらいは父の看病で、Chouchou自体の活動を休止していた時期があったんです。ようやく落ち着いて活動を再開しだしてから以降にできた音楽って、当時は意識してはいなかったんですけど、改めて考えてみると‘生と死’みたいなものを題材にしているんですね。収録された「r.i.p.」という曲はまさにその時期を思って作った曲の一つですが、他のどの曲も大なり小なり、その題材を含んでいて、「VINCULUM」は、その歳月の集大成といえるものでしょうね。
これまでのアルバムと同じく事前にシングルカットされた曲を詰め込んでいるアルバムなんですが、全体を通して‘死’というものを受け止めた後だったので、今まで作ってきたものと根本的に考え方やテーマが異なる作品になったと思います。

 

-それでは、これまでリリースしてきた様々な方向性の違う作品については、どういった意図があるのですか?

今回のアルバムは僕たちChouchouの機軸となっている3枚目だと考えていて、他にも短編の素材集やリミックス集を出しています。リミックス集は今後も出していくつもりですが、今後もっと実験的なサウンドを集めたミニ・アルバムもリリースする予定です。2人とも幅広い音楽を聴き、自分たちのできることに制限を設けたくないので、振り幅を広くしながらも軸からブレないために、主軸とは別の色々な方向性をアルバム単位で表現していこうと考えているんです。メンバーも同じなので特に名義も変えたりしませんが、とにかくやりたい音楽をやっていきたいなと。


-今後の展開はどのように考えていますか?

セカンドライフを軸として活動を続ける上で様々な問題があるのですが、そもそもセカンドライフを利用すること自体が一般的には少々ハードルが高いことだと思うので、どうしたらより多くの人に見てもらえるかということを模索しつつ、最先端のネット技術を駆使していきたいとは考えています。あとは、先のことになるとは思いますが、将来的に人間の五感全てを刺激できるようなライブの形態を実現できたらいいなって、まだ具体的ではないけどぼんやりと思っていたりもします。それを実現できるのであれば、もちろん予算的な問題もありますけど、オンラインでもオフラインでもどちらでもやってみたいですね。僕はライブにストーリー性、インタラクティブ性をもたせるっていうのが大事なことだと思っていて、たとえばオンラインの中でユーザーがChouchouと一緒に音を出すことができたりとか、セカンドライフのライブの中でそういったことを今後実現していけたらと思って新しい企画も準備中です。


-予想できない今後の活動が楽しみなChouchou。最後に<viBirth Magazine>読者の皆様へひとことお願いします。

僕たちの音楽がちょっとでも気になってみたら、とりあえずランダムでいいので黙って僕らの曲を3曲聴いてみてください(笑)。幅広い色々な種類の音楽をやっているので、いずれかの曲があなたの心に引っかかるかもしれません。

 

 

素顔を見せず、音楽的なプロフィール以外はほとんど分からなかったChouchou。実際会うまではどんな人物だろうかと様々な想像を巡らせていたが、実際にあったメンバーのarabesque氏は、バーチャルな世界で活動をしながらも現実的に様々な問題を真摯に受け止め、それでも既存の概念に囚われることなく、オリジナルの音楽を追求し発信し続ける希少なタイプのクリエイターである。残念ながら今回ヴォーカルのjuliet氏にはお目にかかれなかったたが、2人の紡ぎ出す不可思議なChouchouワールドが、その独特の活動スタイルを通して、今後どう変化しどう広がっていくのかとても興味深い。

 

取材、文/濱安紹子 

 

Chouchou 「sign 0」が、2011年3月公開予定のポーランド映画に劇中楽曲として使用されています。この映画は、ベルリン映画祭のパノラマ部門という部門に正式出展されるようです。

 

 

Chouchou 「VINCULUM」は、下記ウィジェットより試聴・DLする事が出来ます。

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Chouchou : http://www.vibirth.com/artist_detail/chouchou

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