September 9, 2009

viBirth Artist Interview♯014『岡村聡士』

岡村聡士

「沖縄」と「音楽」と聞いて、思い浮かべるのは何か?ORANGE RANGEMONGOL 800HYといったカリスマ性に富んだポップ・スターか。或いはkiroro夏川りみといった マスの心象風景を鋭く描く優れた歌い手か。またBEGINTHE BOOMといったルーツ・ミュージックに回帰し、革新的に新時代のフィールドを切り開くパイオニアだろうか。

サービス開始時から程なく、このviBirthにエントリーする岡村聡士もまた、沖縄出身・気鋭のシンガーソングライターとして注目を集めている。一聴すると、彼が紡ぐ詞世界、そして歌声には、“彼特有のリズム”がある。沖縄といえば、あの雄大で抒情的なメロディに人は魅せられる。無論彼が放つメロディも、一連の沖縄サウンドを見つけることが出来るし、彼の本質的なもの或いは長年のキャリアで培い養った唯一無二の美しさがある。しかし、僕が一番着目したいのは、感情がたやすく移入しやすく、親しみやすいその“ノリ”だ。そこには、上に列記したアーティストとはちょっと違う心地良いリズムが流れている。まさに、ここに彼の真骨頂を垣間見ることができる。

取り急ぎ、彼のインタビューをもとに、ざっとプロフィールを記してみた。沖縄県那覇市で生まれた彼は、父親の仕事の影響で幼少期に金武町に引っ越す。繁華街=那覇市とは異なり、米軍基地と隣接しているこの街で、彼は音楽と出会った。たまたま叔母の家の押入れの中にしまっていた、ネックの反り返ったガット・ギターを見つけた彼は、その音色に魅せられ、プレイヤーとしてのキャリアをスタートさせている。再び那覇市に戻った彼は、エレキ・ギターに強い衝撃を受け、手にする。時は、80年代を象徴するミュージック・プログラム「MTV」のスタート、またアメリカのヒット・チャート番組で最新の音楽情報を得て、ハード・ロックに開花する。ヴァン・ヘイレン「パナマ」のコピーを行ったり、50年代ロック創世記のサウンドに傾倒したりと、多感で雑食の思春期を過ごした。大学進学を機に上京。卒業後、自身のバンド~音楽活動と並行しながらメジャー・レコード会社でアルバイトをしていた頃、当時の制作ディレクターに呼び止められ、楽曲制作の命令が下りる。数曲書き上げたうちの一曲が、1996年にリリースされた藤井フミヤのアルバム『TEARS』に収録されている楽曲「STYLE」だった。加えて、アルバム曲ながら、缶コーヒーのCMタイアップもついてきた。その後バイトを辞め、自身の音楽活動を積極的に行うも、徐々にライブや創作活動のペースが落ち、約10年もの間活動を休止していた。しかし、2007年に音楽活動をスタートさせ、ブランクを一切感じさせない、驚異的なペースでライブ~創作活動をこなしている。

現在、彼の活動の根幹を成しているのが、空前の“沖縄ブーム”で次々とオープンする沖縄料理の居酒屋。それもプレイスペースが存在するお店だ。本人曰く「沖縄ブームも一時より落ち着いた」とは言うものの、既に定着・浸透した沖縄文化をより間近で触れることのできるその場所・その時間こそ、彼の本領がいよいよ発揮される。

彼は上質なシンガーソングライターである一方、自作の楽曲を、足を運んでくれているお客さんに一方的に聴かせることだけはせず、「お客さんやお店のマスターから、“皆で歌える”曲が聴きたい」というニーズをもとに、“オーダー・メイド”な作品(ライブや音源集、歌詞等)を提供していて、これがカリスマ的な支持を得ているという。このカリスマ的な支持の裏に、上で述べた“彼特有のリズム”の正体がある。オリジナル曲もカバー曲も、合いの手や掛け声が入れやすく、そして途中から彼の音楽を初めて聴いた一見さんも歌に参加し、歌の終わりには見事なまでに空間は一つになる。個人的な経験も含め、沖縄文化が花咲くお店や作品には、「非日常」「癒し(リラクゼーション)」を求めに向かう傾向が高い。しかも、“享受しに行く”という姿勢で。しかし、彼のライブを観終え、お店を出るお客さんは「元気をもらった。明日も頑張ろうと思った」と口にするサラリーマンやOLが後を絶たないというから、彼の音楽がその人たちにとって、もはや無くてはならない存在であることを顕著に表わしている。今となっては、需給のバランスがきちんと成立している極めて稀有なアーティストといっても決して過言ではない。

既にここだけでも成立している関係性なのに、敢えてviBirthを活用している意味を訊いてみると、本人から実に面白い答えが返ってきた。「おかげさまで、関東近郊のイベントは、手応えを感じているけど、地元・沖縄でのライブ活動が多忙でなかなか出来ない。本場・沖縄の人たちが僕をどういう風に見てくれているかも当然知りたいけど、なかなか直接訊く手だてもない。だから、風通しを良くする意味でも、リアリティのある“沖縄の空気”を取り入れたいし、沖縄への逆アプローチとして、プロモーションも兼ねて、こういうツールを活用させてもらっているんです」。使う人も、その用途も様々。でも、普段行き届かないところをviBirthというサービスをフルに使って拡げていきたいという想いを、間近で訊くことが出来た。単身沖縄から上京し、音楽市場の成熟期に内側でその勢いも実務として体験している。「10年間ほぼ100%活動していなかった。いざ始めてみると、街並みは様変わりしていた。僕が活動を一旦止める前はライブハウスでパフォーマンスすることがステータスだったけど、音楽を伝える手段も含めて本当に目まぐるしく変わっていて、適応できるかどうか不安だった」という言葉とは裏腹に、この一連の活動履歴は、僕はアーティストである彼こそが「音楽を、セルフ・マネージメントする」お手本のように思えてならない。今後の展望を訊くと、「活動は、当然いまのスタンスをキープして、お店で歌い続けたい。また『歌を聴きに行く』という確固たる目的をお客さんに持ってもらうためにも、ライブハウスでの活動も本格化していきたいし、商品としてのクオリティを上げるためにも、時間をかけてレコーディングもし直したい」とのこと。また、音楽人としての在り方について伺うと、「これからどれだけ長い時間をかけてでも、創作活動と平行して沖縄のルーツ音楽を極め、沖縄の音楽を提案し続けたい」と話してくれた。

今後もviBirthは彼の活動をしっかりとサポートしていきたい。

viBirth Shop Widget Artist :岡村聡士

「私の名盤」 Recommend Album (紹介アルバムは 上記 viBirth Shop Widgetからも購入出来ます。)
■岡村聡士がセレクトした「私の名盤」

 

Bon Jovi
Title : Blood Line
Artist :
喜納昌吉&チャンプルーズ
品番 : ISCP-1159
レーベル : ユニヴァーサルIMS
◆Comment
高校生のときに友人に聞かせてもらった傑作アルバム。
現在、海を越えて多くの人に親しまれている「花」という曲は、このアルバムでは「すべての人の心に花を」というタイトルで収録されている。その曲に参加しているライ・クーダーの叙情的なスライドギターがまた素晴らしい。
ロックやポップスと沖縄音楽の融合という、今現在も僕自身が取り組み続けている音楽の原型であり、ひとつの目標とするアルバムである。

Journey
Title : Live!
Artist :
BOB MARLEY AND THE WAILERS
品番 : UICY-90655
レーベル : ユニバーサル インターナショナル
◆Comment
こちらも高校生の時に友人に教えてもらったアルバム。
ロンドン公演を収録したこのアルバムを初めて聴いたとき、アーティストとオーディエンスが渾然一体となったその独特のグルーブに鳥肌が立った。
「No Woman No Cry」の優しさ然り、「Get Up, Stand Up」の力強さ然り。何度聴いても勇気とパワーをもらえるアルバムです。

The Buggles
Title : Talking Book
Artist :
Stevie Wonder
品番 : POCT-1809
レーベル : ポリドール
◆Comment
リアルタイムに彼の作品を聴いたのは80年代のヒットチャートだったが、過去の作品に遡ってこのアルバムを聴いて改めて彼の凄さに感動した。「Innervisions」、「Key of Life」と並んで三部作と呼ばれるこのアルバムだが、僕はちょっと荒削り感が残るこの「Talking Book」が一番好き。
何が驚くって、このアルバムがリリースされたのは彼が21歳の時。
ということはレコーディングはその前。
聴けば聴くほどその恐るべき才能に、開いた口が塞がらない。

Specials
viBirth